創業・起業をすると経理をしなければなりません。
開業時はすこしでもコストを抑えたいと思うのは普通です。
でも、かけるべきコストと削ってもよいコストを見極めなければなりません。
良く削るコストにはいってくるのが「税理士さんへの顧問料」を抑えたいという話が出てきます。
ただ、付き合う税理士さん次第であって、削ってよい税理士さんと削ると損をする税理士さんがいます。
今回は削ってはいけない部分を削って失敗という話をします。
開業してから数年たって、「税理士さんにお願いしようと思いました」という方とお会いする機会があります。
その際にちょうど頼んだ方が良かったかもしれないというタイミングの方ともっと早く頼んだ方がよかったのにという方に分かれます。
今回はもっと早く頼めばよかったのにという方を見ていきましょう。
(目次)
1.自分経理で青色あきらめて損!税金だけでない「損」とは
2.経理が苦手すぎて確定申告をしていない。追加ペナルティーのほうが高くつく
3.最大のデメリット!ただ食べていければよいという感覚になってしまっている
1.自分経理で青色をあきらめて損!税金だけでない「損」とは
青色申告は経理ソフトをきちんと入力できないとメリットが小さい制度です。
個人事業主の場合、青色申告のメリットの青色申告特別控除というものがあります。
青色申告特別控除は経費とは違うのですが、お金を使わなくても経費のように税金の対象となる利益を減らせるものになります。
この青色申告特別控除には3種類あります。
メリットの一番大きいものは65万円の特別控除額・2番目のメリットのある額は55万円・一番小さいものは10万円です。
白色申告の場合はこの青色申告特別控除がないので控除額としては0円となります。
青色申告特別控除の65万円と55万円は複式簿記による帳簿作成が要件となっているので、簿記のルールを知っていて経理ができる場合に適用になることが多いです。
家計簿のように経理をしているだけの場合、青色申告特別控除は10万円になってしまうことがほとんどです。
そのため自分で経理をするなら「白色申告」や「青色の10万円控除」という方が多くなっているわけです。
個人事業主の場合の青色申告の最大のメリットの65万円控除や青色事業専従者給与というメリットを使い倒せていないことが多いです。
さらに、自分で経理をする場合に経費で認められる余地のあるものを経費で落としていないというケースはよく見受けられます。
税理士さんに頼んでいたのであれば、もっと経費として処理してくれただろうにということを数年間続けてしまっているということで損をしていることも多いです。
また、個人事業主の場合には青色申告をしていないことで国民健康保険料も割高になってしまっている方も珍しくありません。
税理士さんへの顧問料や記帳代行料も経費で落ちることを考えると、支払い報酬自体も節税になりますし、税金情報や経理代行で時間的にも楽になると考えると無理に自分で経理をすることは損をしてしまっているかもしれません。
2.経理が苦手すぎて確定申告をしていない。追加ペナルティーのほうが高くつく
これは相当深刻な問題を引き起こしているケースです。
苦手なものに対して見ないことにしてしまう方がいらっしゃいます。
確定申告をしていないとしても、すぐに税務署が来るわけではありません。
そのため経理が苦手なのでと数年間確定申告をすっ飛ばしてしまう方がいます。
個人事業主の場合、確定申告をしていないと、対外的には非課税世帯になってしまうので、所得税がかからず、基本的に住民税もかかりません。
国民健康保険料も最低ラインになります。
しかし、実際には事業が動いていて入金があるので生活がすこぶる楽ということになります。
車を購入したり、人を採用したりするときに銀行融資が必要になったタイミングで過去の確定申告も必要になってきます。
そうなると、過去5年間の確定申告をして税金を払うということになると相当な金額が必要になります。
税金面もそうですが、経理代行料金・確定申告料金となると百万円以上になることも珍しくありません。
宿題と一緒で溜めてしまうと、どうしようもなくなるのです。
自分から確定申告をするケースであればまだよいのですが、税務調査で発覚した場合には無申告加算税・延滞税などペナルティーが重くなるので金銭的負担が大きくなります。
税理士さんに急ぎで処理を頼んだ場合、通常は割増料金になります。
今は税理士さんも人で不足、賃上げをして人を採用しています。
そのため、急ぎでたくさんの量を処理するとなるとコストが上がってしまうからです。
3.最大のデメリット!ただ食べていければよいという感覚になってしまっている
自分で経理をする場合、確定申告までに終わらせればよいという感覚になる人が多いものです。
経理を溜めて決算時期に慌てて処理をしていきます。
そのため、業績というようなものは肌感や預金の残高で感じるようになります。
そうすると、事業という感覚には育ちにくくなります。
食べていければよい仕事という感覚になっていきます。
今月・来月の売上があればよい。
月の生活が少し良くなったら良い。
こんな感じになってしまい、将来のことを考えない習慣ができます。
開業時は若くとも、10年たつと、10歳年を取ります。
自分が70代になったときに、今と同じような仕事がくるのかという怖さにも気が付きません。
悪い言い方をするとその日暮らしの考え方になってしまいます。
また、その考え方に近い方が周りに集まるので会社として成長していくことができないことになります。
その結果、不景気にはめっぽう弱く、好景気にも売上を伸ばす力のない会社になっていきます。
毎月経理をして、経営的な話をすることで「ただ食べていければよい」という感覚から脱出したほうが安全です。
自分で経理をすることでタイムリーに経営状況を把握していくという意気込みを持てない場合には、創業時は税理士さんに経理を頼んだ方が良いと思います。